June 25, 2025
今回ご紹介するのは、Shuttle Notes の中でも特に開発陣がこだわり抜いた一着──丸胴仕様の度詰め天竺Tシャツです。この製品は、一見するとシンプルなプリントTシャツですが、その内側には多くの工夫と細やかな技術が詰め込まれています。
まず、ボディに採用しているのは「丸胴」と呼ばれる脇に縫い目のない仕様の天竺生地です。通常のTシャツでは前身頃と後身頃を別々に裁断し、脇線で縫い合わせる構造が一般的ですが、本品では旧式の吊り編み機を用いた丸胴生地を使用しています。
さらに、生地の密度にも注目していただきたいポイントがあります。「度詰め天竺」とは、糸の打ち込みを限界まで詰めて編み上げた天竺素材のこと。一般的な天竺に比べて重みがあり、しっかりとした手持ち感が特徴です。夏場の一枚着として頼れる存在であると同時に、洗濯を繰り返しても型崩れしにくく、長く愛用いただける素材です。
このTシャツのもう一つの魅力が、ヴィンテージ感のあるプリントの風合いです。デザインはどこかアメリカンなグラフィックを想起させる意匠ですが、その表現方法にはShuttle Notes ならではの工夫が施されています。
プリントは、製品加工を想定してあらかじめインクの濃度を調整しています。一般的にはしっかりと定着させることが多いプリントインクですが、本品では「少しだけ剥がれる」ような絶妙な濃度設計にしています。あえて経年変化することを見越した調整で、着込むほどに少しずつプリントの表情が変化し、唯一無二の風合いが生まれます。
プリントだけでなく、製品加工にも独自の工夫を加えています。過度なウォッシュやダメージ加工ではなく、「やりすぎない」ことを意識したフェード感の演出。自然な経年変化を模した軽やかな色落ちが特徴です。まるで数年着込んだような柔らかさを感じる色合いは、一見無造作でありながら、計算された技術によって実現されています。
そして最後の仕上げに施されているのが、ペンキ飛ばしの加工。これは完全に職人によるハンドワークで行われており、まったく同じ仕上がりのものは存在しません。一枚一枚、表情の異なるランダムな飛び模様が、このTシャツを特別なものにしています。
クラフト感のあるディテールを加えることで、Tシャツというカジュアルなアイテムに、どこかアートピースのような個性と魅力を宿しています。
「温故知新」をブランド哲学に掲げる Shuttle Notes にとって、このTシャツはまさにその精神を体現した一着です。旧式の編み機で編まれた丸胴天竺という伝統的な素材と、現代的なグラフィック表現、そして手作業による仕上げ──そのすべてが融合することで、新しい時代のスタンダードとなり得るTシャツが生まれました。
日常に馴染みながらも、ふとした瞬間に気づく上質な違い。そんな「さりげないこだわり」を、ぜひ手に取って感じていただければと思います。
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